W縁起のスパイダー
夜、バスルームにクモがいた。
全長3mm。 やけに強そうに見える。
一瞬たじろいだ私だったが、
このまま引き下がってしまえばお風呂に入れない。
意を決し、
勇気を振り絞って、
フウッーーーーーーーーーーッ!
と、北風と太陽の勝負を思わせる一風を浴びせてみた。
突風を受けたクモのカラダは、
やや傾いたが、8本の足はバスタブにピタッと着いたまま微動さえもしない。
その粘着力たるや凄いものである。
私は、勝負に負けたことを認め、
お風呂に入るのを諦めて潔く引き下がった。
と、この時点では、夜グモのため縁起が悪い。
翌朝、目覚めるや否や、
走ってクモの所在を確かめに行った。
見れば、同じ場所でスパイダー立ちしている。
お風呂に入ってから外出しようとしていた私は、
丹田に力を入れ、新たなる勝負に挑んだ。
フウッーーーーーーーーーーッ!
クモは必死に足を踏ん張っているように見えたが、動かない。
再び勝負に負けたことを知らされた私は、
お風呂を諦め、出かけた。
この時点では、朝グモのため縁起が良い。
道すがら思った。
もしや……、
前夜の一風の際に、クモは自らの足に、強力な粘着粉を放ったのだろう。
その強度が強過ぎて、
動けなくなってしまったのではないだろうか……、と。
その夜、クモの所在を確かめに行くとバスタブから姿を消していた。
お風呂に入りながら思った。
W縁起を持つスパイダーの先祖は、
ナマケモノなのかもしれない、と。
「ボンちゃん。ゴリラ界にも、朝見ると縁起がいい生きものって、いる?」
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