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2011.06.30

猫の恋

人はいさ 心も知らず ふるさとは
   花ぞ昔の 香(か)ににほひける

『古今和歌集』 紀貫之(35番)春・42

意訳 

あなたは、さてどうでしょうね。他人の心は分からないものだから。

けれど、ふるさとでは、

花(梅)がかつてと同じいい香りを漂わせている。

 

この短歌は恋人を思って歌ったものではないというけれど、

知人、友人、恋人、夫、妻、子供等など誰を対象に考えても、

その対象に対して、今、自分が抱いている思いが、

未来も同じであるかどうかは分からない。

それは相手だって同じことで予期に反して変わりもする。

その点、動物は違うと言いたいところだが、

ここ最近、近所に住む猫のクロベエが急につれなくなって、

クロベエに何が起こったのかと観察していたら原因が判明した。

今、クロベエには夢中に追いかけている猫がいるのだ。

数日前のことだった。

家に帰る途中、一匹の見慣れない猫と道ですれ違った。

器量もスタイルも良く、品性を感じる猫だった。

声をかけると、すぐ側で歩を止めしゃがむ様に座った。

すると、すぐ後ろからクロベエが追いかけて来たのである。

クロベエの形相と態度が少し異様で、

その目は獲物を狙うハンターのごときの鋭さを持ち、

目の前に立っている私のことなど全く見えていないよう様子だった。

姿勢を低くし、忍び足で一歩一歩、猫に近寄ろうとするその様は、

まるでそうしていれば見つからないとでも思っているかのよう。

対象となっている猫は私とクロベエを交互に見ていたから、

その猫にも私にもクロベエの姿は丸見えだというのに、

そのことに気づいていないのはクロベエ、ただひとり(ひとねこ)。

いつもの様に「クロベエ!」と声をかけてみた。

が、全く相手にされていないことがすぐに分かった。

そればかりか、

「( #` ¬´#)この猫だけは誰にも渡さない!」、

といった気迫に気圧されてちょっと怖かったから、

ライバル視されて反撃でもされる前にと、私はそそくさと退散した。

 

こうして、クロベエが恋に落ちていることを知ったのである。

その後、何度かクロベエに会ったが、

依然、つれない。

そっけなく、足早に私の前を通り過ぎて行ってしまう。

ちなみに、クロベエは飼い猫なのだけれど、

その家で子供(人間の子)が生まれたのを理由に、

去年の秋あたりから外で飼われるようになったから、

飼い猫と野良猫のハーフ状態の猫である。

クロベエという名前に関しては、

私が勝手にそう呼んでいるだけで、

飼い主の家では…忘れたけれど、もっと女のコっぽい名だった。

ということでクロベエは雌猫。

なので、イケメンをハントしようとしている女子なのである。

女同士の友情なんて…所詮、こんなものか…と、

態度が急変したクロベエに、

なんとも心寂しい思いを抱きつつ、

紀貫之の和歌を思い出す私なのである。

 

「ボンちゃん、ゴリラの友情は永遠?」

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