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2011.09.03

あの女の色が斬れるか

録画しておいた鬼平犯科帳 第1シリーズ 5話 『血闘(けっとう)』を観て以来、あるセリフが頭から離れない。

おまさ(梶芽衣子)が長谷川平蔵(中村吉右衛門)の密偵になった経緯を知らなかった私は、前々からその経緯を知りたいと思っていた。

『血闘』が正にそれと知りワクワクしながら観ていたら、涙なしには観られない、心揺さぶられずにはいられない物語だった。

平蔵とおまさだけが知る真実を知ることができた喜びさえ感じている。

 

『血闘』、その物語とは…。

おまさは訳あって、こそ泥の引き込みをしていた。

ある日のこと、茶屋で甘酒を飲んでいる平蔵を見かける。

ふたりは目が合う。

おまさには直ぐに平蔵だと分かった。

が、気づかぬふりをして気づかれぬように通り過ぎていく。

一方、平蔵は、その女に見覚えはあるのだが直ぐには誰だか分からなかった。

家に帰り、着物の綻びを縫う手伝いの者の姿を見た時、

さっき見たその女が、

昔、そうして自分の着物を縫ってくれていた、おまさだと思い出す。

 

今回の盗みが至極残忍な犯行になることを知ったおまさは、

平蔵を訪れ、

腕のたつ浪人十人を雇い、皆殺しまで企んでいる旨を話す。

 

平蔵とおまさは、確か…二十数年ぶりの再会。

当時、平蔵の行きつけだった飲み屋の娘(十歳)がおまさだった。

平蔵が家に寄りつかずに放蕩していた時代のことである。

家に自分の居場所を見つけられなかった平蔵は、

顔に喧嘩の傷をつくり、

ゴロツキをやっつけて来たと言っては破れた着物のまま、

酔い潰れそうになった状態でその飲み屋を訪れていた。

平蔵にとってそこは我が家のような所だった。

そんな平蔵を叱るのがおまさだったのである。

おまさは、店の二階で二日酔いで寝ている平蔵の横で、

平蔵の着物の綻びを縫ってあげ、

はいだ布団をかけ直してあげ、

平蔵の望み通りの卵酒を作ったりして手厚く介抱していた。

平蔵曰く、

当時のおまさは最も頭の上がらない母親のような存在だった。

おまさにとって平蔵は、

初恋の人といった感じの間柄である。

 

久々の再会を機に、

おまさは平蔵の密偵となって動き出す。

そして間もなく仲間の盗賊がおまさを怪しみ、

密偵であることがばれてしまう。

おまさの危機を感じた平蔵は、

おまさが残した目印をたよりに盗賊の隠れ家を突き止め、

同心達の到着を待つのだが、

一刻(いっとき)半経っても現れず辺りは暗くなってきていた。

おまさの命を心配した平蔵は、

「もう待てぬ」と、遂には一人で乗り込む。

盗賊たちの話を庭で聞いた平蔵は、

たった今おまさが盗賊の頭に乱暴されたことを知る。

平蔵は、まず一人を庭におびき寄せ短刀で刺殺し、

おまさが居ると思われる部屋の、障子に空いた穴から中の様子を窺う。

すると、おまさは腕をロープで縛られて布団にうつ伏せになっていた。

側にはゴロツキがひとり。

おまさの痛ましい姿に心を傷める平蔵のアップが映る。

「次は俺が相手だ」と言ってゴロツキがおまさを抱こうとした時、

おまさは盗賊の腕に噛みついて抵抗する。

そんなおまさを盗賊は平手打ちした。

その瞬間、平蔵が部屋に入り、盗賊を斬る。

何か言おうとするおまさに向かって平蔵は言った。

「何も言うな」、と。

おまさのロープを刀で切り、背中を撫でる平蔵。

まだ何も気づいていない様子の盗賊の一人が障子を開ける。

平蔵はおまさのいる部屋の襖をすぐさま閉め盗賊を制止し、斬った。

 

腕の立つ浪人が集まるアジトに一人で乗り込み、

これから命をかけて戦おうとしている時に、

おまさの心を気遣い、

背中を撫で、襖を閉める、その心遣いから、

平蔵のおまさへの深い愛を感じずにはいられない。

平蔵は怒り狂ったかのように、

次々と襲ってくる盗賊たちを斬り続ける。

 

十二人を斬った後、

盗賊の頭と手下三人が残り、

平蔵は盗賊の頭と一騎討ちの途中で右腕を若干斬られ流血する。

その時の会話が私の心に焼き付いている。

場所は、アジトの庭である。

*******************

盗人頭:「おい、この辺で名ぐれぇ 名乗んな!」

平 蔵:「貴様らを斬るのに 名などいらん」

盗賊2:「こいつ あの女の色じゃねぇのか?」

盗賊頭:「そうか それで頭に血がのぼったか…」

平 蔵:「だったらどうする 貴様ら外道の刀であの女の色が斬れるか」

一部始終を襖の向こうで聞いているおまさが涙を浮かべて呟く。

おまさ:「長谷川様……」

盗賊頭:「黙れぇ!」

*******************

 

貴様ら外道の刀であの女の色が斬れるか

普通だったら、

貴様ら外道に盗賊改め鬼の平蔵が斬れるか?

と言いそうなところを、

貴様ら 外道の刀で あの女の色が 斬れるか

と言った。

命をかけておまさを救おうとしているその時に言った言葉である。

言ってみれば、おまさはついさっきまで盗賊の一味だった女。

不運な境遇により時に人は自らを貶めるようなことをすることがある。

けれど心を改めた時から人は変われると信じる平蔵。

気高い心を持つおまさの魅力を誰よりも知る平蔵の、

心からの言葉だということが伝わってくる。

「きさまら げどうのかたなで あのおんなのいろが きれるか」

このたった25文字。

その言葉によって、

地に落ちていたおまさの心が天に昇った。

「長谷川様……」と、呟いた時のおまさの色っぽさときたら、凄い!

「貴様ら 外道の刀で あの女の色が 斬れるか」と、言い放った平蔵のカッコよさときたら、それに値する形容詞が見つからないほど!

 

そこで鬼平犯科帳ファンに朗報!

フジテレビ 2011年9月30日(金) 21時~

『鬼平犯科帳 スペシャル』が放送されるという。

『水戸黄門』が長い歴史に幕を下ろしたことだし、

『鬼平犯科帳』の続編が放送されることを祈ってやまない。

 

 

「ボンちゃん。ゴリラ界にも、飛びぬけて人情(ゴリラ情)に厚いゴリラっている?」

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