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2011.10.17

『un ippopotamo』

冬浅き風に吹かれて、

詩をつくってみた。

 

 

 

『un ippopotamo』 

 

 

余す所無く冬の兆しを感じる風

草木が枯れた匂いがする

冬浅き風に吹かれたら

なぜだか急に

寒空だった心が赤く染まりだした

瞬く間に

心の隅ずみまで夕焼け雲が広がる

と思ったのも束の間

雲に宵が染み渡り暗くなり

見渡す限りに幻想が映りはじめた

 

風を感じる

遠く彼方の理想郷から吹いてきた風だ

風は

郷愁を覚え

帰る空を思いだしているのだろう

不思議な光景が心を通り抜けていく

 

月の光と戯れる北風

凍空を駆け巡る幻想的なメロディ

星と星をつなぎ合せているのは空想を激する疾風 

星降る夜に見惚れる一番星

海辺に佇む黒いギター

波乗りする四分音符

海に飛び込むヘ音記号を追う五線譜

水際でたじろぐ休止符たち

永遠の思い

情熱の道しるべ

赤い毛氈が敷かれた黒いゴンドラ

 

霧が海を覆いだした

まだ叶わぬ恋の祝祭のようだ

 

船着き場に向かう一層の黒いゴンドラ

櫂を漕ぐ音がする

漕いでいるのは

黒いマントを着た誰かだ

 

小さなカバが船着き場にいる

黒いマントが何かを話しかけているようだ

 

ノスタルジックな音楽

言葉を感じる

 

黒マントが言った

「何を求めて水際を彷徨う?」

小さなカバは頭をあげた

黒マントを見つめている

少し首をかしげ

小さなカバは答えた

「ズット サマヨウ アル一粒の涙ヲ サガシテ」

黒マントは言葉を続けた

「涙は海の雫 海神は涙のすべてを知る 涙の居場所を知りたければ 一緒に来るがよい」

小さなカバはゴンドラに乗った

 

ゴンドラが海の奥に向かって進みだした時

わたしは小さなカバと目が合っていることに気づいた

ゴンドラは直ぐに霧の海にのまれてしまった

 

凍てつく風

霧の中に道が見える

白い薔薇の道

 

記憶の行方に続く道だろうか

小さなカバを追ってわたしは道を歩いた

 

右と左へと道がふたつに分かれている

左へ進もうと決める

 

歩み進むと

道は現実の世界に繋がっていた

小さなカバの乗ったゴンドラの行き先は分からない 

 

幻想は消え去った

 

命のシナリオなのだろうか

あの小さなカバと再会する日が来るような気がする

未知の記憶が一瞬心をよぎったのだとしたら

理想郷の風が運んだ七不思議

 

 

 

「ボンちゃん。ゴリラは未知の出来事が心をよぎることってある?」

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